14.
ある日の昼下がり、マオは蛇に睨まれた蛙のように、身動きが出来ずにいた。
猫にとって、視線を合わせるという行為は一つの会話の様な物である。
猫が相手を見つめるという行動には、何かを飼い主に求めたりする時や、親愛や愛情から来るもの、敵意や警戒から来るもの。
いくつもの意味がそこに含まれている。
野良猫の場合には、大体にして警戒や恐れから、相手を見つめる事が多い。
なので、もし人慣れしていない猫に近づきたい場合は、あまり視線を合わせる事をせず、相手の警戒が和らぐまで大きく動いてはいけない。
そして現在のマオは。
「猫ちゃーん……大丈夫だよぉ、怖くない……怖くない……」
手をわきわきとさせながらにじり寄る、エプロン姿の一人の女の子から目を離せないでいた。
【スタッフ通信 vol.14】(2019.7.29)
7月15日の「スタッフ通信」で「クリームソーダは危険なのでハーフサイズからどうぞ」と書いたら、お客様から「なんでですか?」と聞かれました。ありがとうございます。
なによりもSS経由で反応があったことが嬉しくて、ニタニタ笑ってしまいました!
・・・で、ですね、ぱすた屋REBのクリームソーダはですね、普通サイズがデッカイので、なにげなくオーダーすると大変かと思われます!(ハーフの3倍)
ハーフサイズが普通よりやや大きめのグラスなので、注意が必要です。
通常サイズはジャンボサイズです、とよくわからない日本語でご説明しておりますが、シェフが通常サイズと言い切るので、そのあたりご了承くださいませ。
「クリームソーダ」ハーフ500円 通常800円 (税抜)
15.
遡ること数時間前、その日は、天気も良く絶好の散歩日和だった。
いつもの駅前に行ってみれば、いつも通り駅の片隅の、日当たりの良い場所でクロトラがどっしりと身体を横たえて昼寝をしていた。
マオがその姿を見つけて嬉しそうに駆け寄れば、気配を察して寝息が一瞬だけ止まるが、正体を察するとまたすぐに寝息を立て始める。
「ねぇ、クロトラ、何かお話してよ」
寝ているのをお構いなしに、マオがクロトラに話しかけるが。クロトラは依然として昼寝をやめようとしない。
しばらく周りをにゃあにゃあしながらぐるぐるとしていると、クロトラも流石に堪えたのか薄目を開けてちらりとマオを見た。
「ね~ぇ~、ねぇってばぁ」
「うるせぇなぁ、さっき飯食って今は動きたくねぇんだ。もうちょっとだけ寝かせてくれよ」
「え~……だらしがないなぁ。いいよもう、僕も寝るから」
【スタッフ通信 vol.15】(2019.8.5)
7月後半までの涼しさがうそのように、毎日暑いですね~~~バテそうです。
しかし!暑い夏にもいいことはあるのです!
夏ならではの美味しいものといえば鱧。ハモです♪
京都では、夏といえばハモの湯引き。梅肉や酢味噌でいただく夏の味覚です。私は広島出身なので、夏になるとスーパーでもハモの湯引きが並んでいたのを懐かしく思います。
ハモは高級魚ですが、伊豆ではハモがマイナーなせいか、魚屋さんで時々安く売られてるんです。シェフは安くて新鮮なハモを見つけると、骨切りの練習も兼ねて仕入れてきます。今年も新鮮なハモを、せいろで蒸して、山葵マリネにしてみました。(写真は試食中~~)湯引きとは違った食感と甘みがとっても美味しかったので、オードブルでメニューに仲間入りしました!
☆夏のSS新企画!
「SSを見たよ!」と声をかけていただいた方に、ハモの山葵マリネを試食でお出しします♪ スタッフかシェフにお声がけくださいね!
※数に限りがありますので、ハモが品切れの場合は違う何かになります。お楽しみに☆
16.
溜息吐きつつ、マオもクロトラの腹目掛けてぼすんと身体を横たえると、居心地のいい姿勢を探してもぞもぞと身体をくねらせる。
普通の猫よりもいくらか恰幅のいいクロトラのお腹は、適度な弾力と柔らかな毛に包まれていて予想以上に心地が良く、家にある自分用のクッションよりもいいかもしれないとマオは思った。
「おい、わざわざくっついて寝るなよ、うっとうしい」
「いいじゃんいいじゃん、暖かいし」
「……ったく、仕方ねぇなぁ」
「そうそう、しかたないしかたない」
それから数分と待たずして、あれだけ騒いでたマオが先に寝息を立て始める。
その様子を見たクロトラもフンと鼻を鳴らし、やがて眠りに落ちて行った。
やはりクロトラもマオも猫なだけあって、陽だまりの中でのお昼寝には、なんとも抗いがたい魅力がある。
時々聞こえる電車の音や、遠くに響く鳥の鳴き声は、のどかな日常を感じさせる心地の良いBGMとして。
クロトラが教えてくれた、パン屋という店からの香ばしい匂いは、マオに未知の美味しい食べ物を想像させる夢を見させてくれた。
【スタッフ通信 vol.16】(2019.8.19)
実はアニメオタクのシェフ。突然ボルシチを仕込み始めました。買出しでビーツを見つけたからだそうですが、私は知っています。夜な夜な仕込みの合間に、ガルパン観てたのを、、、。
ご予約のパーティ料理でお出しして、最後の少し残ったのは、まなかいで「ボルシチそうめん」でいただきました!
17.
いつ終わるともしれない、心地いいまどろみに二匹が身を任せていると。
二人の居る場所を抜けるように吹いたそよ風に、マオがようやく目を覚ました。
クロトラのお腹に身体を預けたまま、ぐーっと伸びをすると、血がさぁっと全身を巡って頭に流れ込むような感じで、すっと目が覚めていく。
上半身を起こしてきょろきょろと周りを見渡せば、当たりの雰囲気は少し賑やかになってはいるものの、陽の位置はあまり変わってはいないようだ。
「ふわぁ、どのくらい寝ちゃったのかな。クロトラはまだ寝てるみたいだけど」
杏美が家に帰ってくるまではまだまだ時間がありそうだが、頼みのクロトラは今日は何もする気が無さそうで、ちっとも目を覚まさない。
うーん、と悩みつつクロトラの大きなおなかを前足でぐにぐにと押してみても、うっとうしそうにするだけでクロトラはやっぱり起きてくれない。
【スタッフ通信 vol.17】(2019.9.3)
「ぱすた屋には絵師がいる・・・」
ある日、なにげなく置かれたメモに、なにやら可愛らしいイラストが。。
小さな紙に、ちいさなイラスト。か、可愛いぢゃねえか。
おもわず私も真似して描いてみました。
いっそノートにしてしまおう。
そしてみんなで描いたら、きっと楽しいぞ!
ということで、
らくがきちょうをつくってみました!
よかったら、描きにきてくださいね☆
シェフおすすめの夜の部限定オードブル(5種盛)
「本日のチョイ盛りオードブル」1,000円 (税抜)
最近はこーんな感じです!
●豆腐のスモーク
●ローストビーフ●いぶりがっことクリームチーズ
●砂肝のコンフィ●ゴーヤのピクルス
18.
「まぁ、いっか。おばあちゃんがおやつくれるかもしれないし、今日はもうお家に……」
と。そこでマオが動きを止めた。遠くからでもはっきりと分かる程、こちらをじっと見つめるその瞳に気付いて。
緑のエプロンをかけた、髪の長い女の子が、マオをじっと見つめていた。
確かあそこは、サワガニを食べに行く時に教えてもらった、パスタという食べ物を出すお店だっただろうか。
そのお店の前で、箒を手にした女の子が作業の手を止めて、こっちをなんとも言えない表情で見つめているのだった。
「だ、誰だろう……。あ、こっちに来た」
彼女なりに、マオを脅かさないように精一杯なのだろうか。
ぎくしゃくとした動きで箒を側にあった看板に立てかけ、何故か忍び足でゆっくりとこっちに近づいてきた。
本当に怪しすぎる。普通の野良猫ならば既に猛然と逃げ出していただろう。
だが、普段から飼い主の杏美ちゃんやおばあちゃんおじいちゃんに優しくされていたマオには人に対する恐れがあまり無かった。
なので、あまりにも怪しすぎるその女性に対しても警戒こそするものの、ただじっと見つめるばかりだった。
ある程度まで近づいてくると、彼女がつぶやく声が少しだけ聞こえてくる。
【スタッフ通信 vol.18】(2019.9.12)
ようやく涼しくなってきて、もうすぐ秋の気配ですね。
とても素敵な手作り陶器のコーヒーカップをいただきました。ほこほこ幸せな気持ちになります♪
「ホットウインナコーヒー」450円 (税抜)
19.
「ふわぁ、逃げないでいてくれたぁ……。可愛い……どこの猫ちゃんかなぁ」
どうやら、時折クロトラやマオを見つけては撫でたがって近寄ってくる、いつもの人たちの同じ目的の様だった。
クロトラに相手を任せて逃げてもよかったのだけれど、彼女はマオに興味がある様なので、どうせ暇だからと少しだけ付き合って上げる事にした。
少しだけ緊張を解いて座り直し、彼女を見つめてマオが挨拶代わりにニィとひと鳴きする。
「かっ、かわっ……!?」
マオの鳴き声に反応して、女の子の方がびくりと震える。
何か内から湧き出る衝動と戦っているのか、胸を撫で抑えながら大きく深呼吸して、再びそろそろとマオに近づき始めた。
「な、撫でてもいい? イヤなら眺めるだけにするから……」
『ちょっとならいいよ、強くはしないでよね』
そうして、手をわきわきとさせながらそおっとマオに手を伸ばし、現在に至るのだった。
【スタッフ通信 vol.19】(2019.10.1)
先日、写真フォルダを整理していたらカルパッチョの写真を発見!
最近時々釣りにいってるシェフと私。先日はオオモンハタが釣れたので、コース料理をご予約のお客様にポワレでお出ししました!
そしてその後めっきり釣れておりません><良いスポットありましたらぜひ教えてくださーい!
20.
「わぁ、毛並みがすっごい綺麗……。首輪も可愛いし、飼い主に大切にされてるんだねぇ」
女の子の恐る恐るながら思いやりのある優しい撫で方に、マオはとりあえずは安心して身を任せていた。
頭や背中は毛並みに逆らわずに優しく、顎や首のあたりは少し強めに掻くように。それでいて、多くの猫にとって嫌なお腹や手足には決して手を伸ばさない。
猫との触れ合い方を知っているようだ。
『ふぁ~ぁ、なんだその人間、また来たのか?』
『あっ、クロトラ、やっと起きたんだ』
声に振り替えれば、クロトラが立派な犬歯が見える程に豪快にあくびをしていた。
それから後ろ足で首の横を二度、三度と掻いてからブルブルと顔を振り、前足の爪を立てて地面にひっかけてぐっと伸びをする。
「おお、ボスも起きたね、おはよう!」
『ボス? クロトラの事を言ってるの?』
『俺の事をそう呼ぶ奴は結構いるからな、多分そうだと思うぜ』
目が覚めてからの一連の動作を終えたクロトラは、少しだけ周りの様子を見渡してから座り込む。
さりげなくマオよりやや後ろ、彼女の手の届かない辺りに移動したので、今日は撫でさせる気分ではないのかもしれない。
【スタッフ通信 vol.20(2019.11.11)
あっというまに11月になってしまいました。しかもすでに11日・・・
間があいてしまいましたが、先日の貸切の皆様にたくさん寄せ書き書いていただきました。
ありがとうございました!うれしかったです☆☆
ツイッター使いこなせてなくてハッシュタグ何それおいしいの状態ですが、頑張ります~~~